ヨシコの中国語学習記録

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レビュー:紅楼夢(北京語言大学の学汉语分级读物)

紅楼夢(全4冊)のレビュー。

f:id:liangmei:20180329022122j:image

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おすすめ度 ★★★★★
ストーリーの面白さ ★★★★★
学汉语分级读物シリーズ 第2級(800字)レベル
おすすめレベル 中級~、HSK5以上
ページ数 80P程×4冊
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ここ1週間程ドハマリしていた紅楼夢のレビューです。
「おすすめ度★5、面白さ★5」はもしかして初めてなんじゃないか?
いやー、ほんと、これはハマりました!
なんで紅楼夢が日本でマイナーなのか不思議に思う程の面白さ。
もともとはかなりの長編大河小説なので、当たり前ですが、このペラッペラの4冊ではかなーり物語が省略されています。
ただ、原文と見比べると意外な程同じ文章で載せてある部分もあって、全編を完全に書き直したというわけでもなさそう。
原作は18世紀の作品なので、簡単な現代語で短く書き直したんだろうと勝手に思っていたけど、どちらかというと、いらないところを大幅にカットして、載せているところは意外と原文に近い表現で載せているっぽい。なので、その分難しい!
(一応、少しネットに出ていた原文と、中国発行の青少年版とも見比べて、確認済み。青少年版の方が、私が当初持っていたイメージに近い。)
出てくる人物も非常に多いので、話に付いていくのもなかなか大変。さも重要そうに登場した人物が、その後全く音沙汰なしになり、後でどうなったのかと思ってネットで調べたら、カットされていた部分で死んでた、とか。。(苦笑)
まぁ短縮版だから仕方ないんだけど、後からネットで原作の細かいあらすじをチェックしたら、「もうちょっと吟味して話を入れ込んでくれてても良かったかも」と思ってしまった。。
まぁでも面白おかしく楽しく読めたので(マジ泣きもした)、多読への取っ掛かりとしては十二分におすすめできる本です。
紅楼夢」の原作自体が持っている力が引っ張ってくれます。
(ま、嫌いな人はだめなんだろうけど、それは仕方ない)

■レベルについて
紅楼夢の4冊は、北京語言大学の学汉语分级读物シリーズの第二级(800字レベル)。
このシリーズは3つのレベルに分かれていて、レベル2というのは真ん中なので、読む前は正直余裕だろうと思ってたんだけど、実際は相当難しい。

私基準(HSK5級)で申し訳ないが、かなり分からない部分があります。話には着いていけるけど、会話の細かいニュアンスや本当に言いたい事が分からなかったりする。
古典だから難しいのか、ちょっとまだ分からないんだけど、通常の「SVO」的な文法解釈では意味がつかめない複雑怪奇な言い回しがしょっちゅう出てくる。「名詞名詞名詞」みたいな。。「え?どう解釈しろと?」と。(苦笑)
以前私がいくつか読んだレベル別読み物は、全て北京大学の「汉语风」というシリーズだったんだけど、今回の紅楼夢との比較で言うなら、汉语风の4级(1100レベル)の方が圧倒的に簡単で、普通に読めます。

そこで疑問になるのが、「800字」という表現。よく見たら、単位が「字」なんだよね、このシリーズ。「汉语风」の方は「1100词」と、単位は「词」。
漢語風(中国語で書くのがめんどくさくなったので、以後日本の漢字)はどうやら単語数で数えてて、北京語言大学のシリーズの方は「漢字数」で数えていると思われる。
つまり、単語数で言うと圧倒的に北京語言大学の方が多そう。
ちなみに、子供向けディズニー本なども、「漢字数」で制限されているようなので、中国人にとっては、漢字の数が問題であって、単語数は二の次という事かもしれない。
外国人にとっては、やはり「単語数」がメインの問題になる訳だけど、まぁこのシリーズはそれが基準ということだと理解しておく必要がありそうです。
800字の場合の単語数がどれぐらいになるのかが気になるところだけど。。

紅楼夢という小説についてのもろもろ考察
ところで、原作の方の紅楼夢について。
中国4大名著と呼ばれている物は、三国演義水滸伝西遊記紅楼夢の4つなんだけど、紅楼夢のみが何故か日本ではほぼ無名なのですな。
私はそこそこ文学少女だったけど、中国との関わりができるまでは全然この本のことを知らなかったし、普通の日本人はなかなか知らないんじゃないかなぁ。もったいないことです。
私の場合は、仕事で中国に出張で来ていた頃に、中国人の友人が子供用の紅楼夢を読んでいて、この本の事を教えてくれたのがこの小説を知る事になったきっかけ。「これを読めば中国人の考え方が分かる」と言われたのがすごく印象に残っている。
今回読んでみて、「中国人らしさ」というよりも、「人間らしさ」がよく表現されていると思った。
現代日本人から見たら、あり得ないような極端な行動をする人達ばかりだけど、極端だからこそ面白く、分かりやすい。紅楼夢が面白い理由は、キャラ立ちにあると思う。
登場人物に、とにかく癖が強い人が多いのだ。
主役級の黛玉ちゃんからして、病弱な絶世の佳人という設定のくせに、性格はイジけてるし、しょっちゅう逆ギレするし、意地っ張りだしすぐ泣くし、かなり強烈!(周りに実在したら、確実に超うざい)「これ、普通に可愛い性格じゃだめだったのか?」とちょっと思ってしまうぐらい性格が捻じくれてる。
他の「性格キツめ」の女性に至っては、「烈女」という単語がぴったりだし(苦笑)
男性陣は、とぼけてたり役立たずだったり阿呆だったり、・・・ま、男性陣は大体イケてない。というか初期の方で、「あの一族の男性はイケてない」って断言されてるし。
そんな人たちの物語なので、起こる事件も強烈。
唐突に怒り出したり泣きわめいたりすぐ死んだりするから、感情の変化について行くのも大変で、「きっと省略され過ぎて意味が分からないんだな」と読みながら思ってたんだけど、後からネットでチェックしたら、どうやら原作の時点でそういう話だった(笑)
突っ込みどころも多いし、自分とは共通点も何もないような人達の物語なのに、いろんな登場人物に共感できて、面白おかしく読めてしまうのがすごい。
作者が男性なのが不思議なぐらい、女性キャラの心情もよく表現されている。・・・意味不明なキレっぷりや、極端な冷酷さもあるけど、読めば共感できるキャラが誰でも見つかるんじゃないかな。
主人公の宝玉はとぼけてて優しくて大好きだし、黛玉の意地っ張りな逆ギレっぷりにも共感できるし、王熙凤の強さや悪どさも理解できるし、尤三姐の潔さも好ましい。
人の持つ感情が濃縮されて表現されてる感じ。

レベル別読み物ごときでこれなので、原作をそのまま読めたらどんなにいいだろうと思わずにいられない。

中国では大量の紅楼夢が各社から発行されていて、簡単に書き直された「青少年版」とかいうのも大量にあるので、今度はそちらを読んでみたいなぁ。
現地の小学生レベルなら、辞書を引き引き読める・・・かも??
でもいつかは原作!(もしくは、大人向け現代語版)

ちなみに、その後の調べで、中国人なら原文をそのままでも読めるみたいなので、我々にとっての「源氏物語」などと比べると、原文の時点で遥かに現代語に近い言葉で書かれているみたい。源氏は1000年経ってるし、紅楼夢は300年程なので、その差かな。
いつか原文を読めるといいなぁ。

それか、きっぱり諦めて、次回帰国時に日本語版を買って読むか?

・・・教材レビューの筈だったのに、読書感想文になってしまった。(´・ω・`)
これでも3日以上掛けて書いたので、もうこのまま載せておくことにする。