ヨシコの中国語学習記録

英語上達完全マップの要領で中国語を学習してみる記録

「汉语口语速成シリーズ」レビュー

「汉语口语速成」シリーズのレビュー。

どうやら、このシリーズの検索でうちにたどり着く人が多いようなので、一度まじめにレビューします。(2019/01/18 一部更新)

漢語口語速成・入門篇(第2版)(日語注釈本)上冊(中国語) (対外漢語短期強化系列教材)??口?速成-入?篇(下)(第二版)(日文注?)??口?速成(基?篇)(日文注?) ??口?速成:提高篇(第2版) 漢語口語速成・中級篇(第2版)(中国語) (対外漢語短期強化系列教材)
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シリーズ全体としての総合評価
総合点 ★★★★☆

口語表現 ★★★☆☆+(やや北方表現寄り)
文法 ★★★★☆
練習問題 ★★★☆☆
HSK対策 ★★★★☆
音源 ★★★★★
説教臭のなさ ★★★★★
ストーリーの面白さ ★★★☆☆
おすすめレベル・・・総合力をあげたい人。込み入った内容に関して意見交換できるぐらいのレベルを目指す人。
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この教科書は中国の大学や語学学校では多分鉄板の教科書の一つで、「短期学習者用の口語教材」という位置付けで、基本的にシリーズを通してスパルタです。

私の場合は、語学学校で薦められたのがきっかけで、基礎編全部と、堤高編真ん中ぐらいまでマンツーマンでレッスンしてもらいました。
「この本で勉強すると速いです」と言われ(速成だけに!)、何も考えずにこの本をやったけど、今思うとこの「速い」の意味は、「詰め込まれます」の意味だったようで、予習復習などをきちんとしない人には辛くなる可能性が高いです。(経験者)

■本文の内容(極めて個人的な見解)
「口語の教科書」という扱いだけど、「スピーチ及びディベートができるようになること」に目標が絞られていると思います。シリーズ全体に一貫した思想として、「どこどこへ行きたいです」とかいうような「要件会話」ではない、本物の「日常会話」ができるようになる事を目指している事が感じられます。
逆に言うと、初心者にとっては「丸暗記すれば旅行時にすぐに使える会話」等が少ないので、レベルがある程度上がってくるまでは我慢が必要です。

例えば基礎編で旅行を扱った課では、旅行がテーマの筈なのに、「何時に出発しますか?」「窓際の席お願いします」「どこどこへの切符1枚」とかはちっとも載ってなくて、「旅行行ったんだって?どうだった?」「それが車酔いがひどくてさー、ひどい目にあっちゃったんだ。」なんていう会話だったりします。
中級編に至っては、本文自体がほぼディベート
なので、日常生活ですぐに使いたい表現は実はあまり載ってないです。

後は、内容に説教臭さがほぼないのがこの本のいいところです。中国発行の教科書って、気持ち悪いほど説教臭い物が多いので・・・。本文の最後に、毎回「人生で一番大事な事は「誠実」なのだ」みたいな押し付けがましい結論を書かれると、本当に胃の辺りがムズムズして来て勉強したくなくなるのです。何の教育しようとしてるんだか・・・。
それに比べて、このシリーズでは常に、「あんたはどう思う?」というスタンスで本文が書かれていて、本文中でも「いや、自分はそうは思わない」という人がちゃんと出てくるので、イライラする事が非常に少ないです。時に作者が読者に語りかけてくる時もあるけど、常に中庸で、たまにシニカルな思想もほのみえます。

 ■総合力
口語教科書の位置付けだけど、ただの会話教科書ではなく平叙文もまめに入っているし、使ってある単語も単なる日常用語的なチョイスではないので、実は中国で言うところの「综合」に近い教科書内容かも。
基礎編以降には重要な語法(「又……又」、「不但……而且」など)がきちんと入っていて、単語のチョイスも試験向きなので、HSKなどを視野に入れている人にも向いているでしょう。
このシリーズの「口語」の意味は、「書面語ではない」ぐらいの意味と思った方が正解と思われます。
このバランスの良さが語学学校などでよく使われる理由かも。
とある語学学校の説明で、入門編→HSK3級、基礎編→HSK4級、提高編→HSK5級,中級編→HSK6級と紹介していると書いているのを見かけましたが、私の体感でもまぁまぁそれに近いです。ただ中級編はかなり難しく、日本の出版物での「上級」教科書以上のレベルです。私は2018年の時点でHSK6級で230点を取りましたが、6級合格後にこの中級を見ても未だに知らない単語がいっぱいあります。(何度も断念し、未だに終わらせていません。2019年1月現在)

■入門レベルの日常会話を学びたい人
入門~初級レベルの時、この本だけで簡単な日常会話ができるようになるかというと多分無理です。何故なら簡単な日常会話なんて載っていないから(笑)
平行して日常会話用の会話集のような物を別でやる方が良いです。初中級以上になってくると、この本の内容が生きてきます。

■内容のリアリティ
常にリアルです。ただの会話集ではなく、登場人物のキャラが立ってます。
「日本人の誰々ちゃんは、クラスで僕達とは全然話さないくせに、日本人同士だとめっちゃしゃべるんだよね」とか、特徴をよく捉えているなぁと思います(笑)。多分作者は具体的な人物のイメージが先にあって、これを書いたんじゃないかな?
単なる「優等生」ではなく、ちゃんと欠点を持った一癖も二癖もあるような人たちが登場するリアルな世界です。
(ちなみに他シリーズだと、だいたいマリーとアンナという明るい欧米人の優等生が出てきて、大学で太極拳を朝から練習したり、お友達と優等生な会話を繰り広げるのが鉄板。)

■文法について
口語の教科書だけど、入門編に含まれている文法解説が、実はかなりしっかりしていて分かりやすいです。他の本や文法書でみるとすごくややこしく感じる物も、あっさりとシンプルに的を得た説明があって、後からこの本を見て「こんなにシンプルな事だったのか!」とびっくりしたりします。
ただ、教科書の作り自体が古臭いので(黒の一色刷りで、文字の大きさの変化などもなく、絵も古臭くダサい)、一見わかりにくい。
練習問題も結構あるが、先生がいないと回答が合っているのかどうかが分からないので、入門レベルでの自習には不向きです。
入門の2冊で基本の文法は全て終わり、基礎編以降は個々の語法です。

■新出単語
公式には、入門(ゼロレベル~)、基礎(800語~)、提高(1500~)、中级(2500~)、高级(3500~)となっているので、ざっくりした単純計算で、基礎編で700語の新語、提高なら1000の新語を学べるという事になるんだけど、出て来る単語はそのイメージ以上に厳しく、試験向き。(もちろん生活でも使える)
ちなみに、发展汉语シリーズの場合、初级1,2(ゼロレベル~)中级1,2(2000~2500以上)、高级(3500~4000以上)となっているので、数だけの比較では发展汉语と大差はない事になるんだけど・・・。やはり感じ方が違うのは、1冊の詰め込み量が違うからか、単語のチョイスが違うからか、未だに判断が付きません。

 ■日本語版について
入門編の2冊と基礎編までは日本語解説版が出版されています。提高篇以後は英語版のみ。でも提高以上をやるぐらいの学習者なら中国語の説明で十分理解できる筈なので、問題ないでしょう。逆に言うと、中国語の説明で理解できないレベルなら、提高篇(特に後半)では消化不良をおこすでしょう。

 

ここから、個別レビュー。

■入門編(上)

漢語口語速成・入門篇(第2版)(日語注釈本)上冊(中国語) (対外漢語短期強化系列教材)

漢語口語速成・入門篇(第2版)(日語注釈本)上冊(中国語) (対外漢語短期強化系列教材)

 

持っていないため無評価。 

 

■入門編(下)

漢語口語速成・入門篇(第2版)(日語注釈本)下冊(中国語) (対外漢語短期強化系列教材)

漢語口語速成・入門篇(第2版)(日語注釈本)下冊(中国語) (対外漢語短期強化系列教材)

 

 上にも書いたが、文法説明がかなり良い。
内容は、「口語の教科書の筈なのに、何故平叙文?」みたいな内容も入っていて、あまり口語っぽくはない。
文法を入れ込むためか、内容もそんなに面白い物ではない。

 

■基礎編

漢語口語速成・基礎篇(第2版)(日文注釈版)(中国語) (対外漢語短期強化系列教材)

漢語口語速成・基礎篇(第2版)(日文注釈版)(中国語) (対外漢語短期強化系列教材)

 

基本文法が分かった後の重要構文がたくさん出て来る。
そのまま使える例文はあまり多くないが、生き生きした世界観が秀逸。
ちなみに、私は未だにこのレベルの構文も使いこなせていない。

 

■提高編 

??口?速成:提高篇(第2版)

??口?速成:提高篇(第2版)

 

後半、加速度的にきつくなる。きっちりやればHSK5級レベルまで行けそう。
提高の後半には、ニュース記事的なノリの文章も入ってくる。
2006年の出版のくせに、自動掃除ロボットの話なんかが入ってるところがすごい。(初見の時は意味がよく分からなかったが、数年後に復習した時に、「あぁあ!私が持ってるあれか!!」とびっくりした。)

 

■中級編

漢語口語速成・中級篇(第2版)(中国語) (対外漢語短期強化系列教材)

漢語口語速成・中級篇(第2版)(中国語) (対外漢語短期強化系列教材)

 

語学学校の先生曰く、「このシリーズの中級は、もう口語というよりは読解なので、お薦めできません」だそうだが、中国語でそこそこ深い議論ができるようになりたいような人には良さそうに思う。
HSK6級以上のレベル。(6級ギリギリ合格レベルの人には、多分きついでしょう)
個人的には、何度も挑戦し、その度に断念した本。・・・今なら読めるかも??

 

■高級編

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高級編は、第一版では存在したが、第二版は出版されていない模様。おそらくここまで進める学生がいなかったのでは?と推測している。
実際、そのレベルなら、ニュースやドラマなどの生素材で十分学習できるレベルと思われるので、そもそも口語の教科書が必要かどうか・・・。
中国では今でも1999年発行の第一版を販売している。
表紙デザインが第2版や第3版とはあまりにも違うので、個人的には買いたくない。(一緒に並べたくないというだけの理由だが)

 

※第三版について
現在の最新版は第三版で、第二版とは出版社が変わりました。
私が持っているのは全て第二版なので、中が何か変わったのかどうか、ちょっと気になるところではあるのですが、さすがに既に持ってる本をもう一度買うほどのモチベーションはなく、第三版は未購入です。文中のリンクは第二版。新しいもの好きの人は第三版を買ってみてもいいかも?作者は同じ人で、第一版と第二版でも内容の増強があったようなので、第三版では内容が変わってもっと現代に即した内容になっているかもしれません。